まず結論:3行でいうと
② 打てる手は一つではありません。給与・働き方、未経験の育成、シニア、女性、外国人材。工場の状況に合わせて組み合わせるのが現実的です。
③ どの手にも共通するのは、「教える人」と「残りたくなる職場」がなければ続かないということです。
数字で見る、整備士不足
国土交通省が公表している資料には、こんな数字が並んでいます。
| 項目 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 自動車整備の有効求人倍率 | 4.99倍(2023年度)。全職種は1.17倍 | 厚生労働省「職業安定業務統計」 |
| 整備要員の平均年齢 | 39.7歳(2003年度)→ 47.2歳 | 日本自動車整備振興会連合会「自動車整備白書」 |
| 整備学校の入学者数 | 12,394人(2003年度)→ 7,068人(2024年度) | 全国自動車大学校・整備専門学校協会調べ |
| 整備士の不足を感じている事業者 | 約6割 | 日本自動車整備振興会連合会「自動車整備白書」 |
求人倍率が約5倍ということは、1人の求職者を5つの会社で取り合っている状態です。しかも、整備学校に入る若者は20年でほぼ半分に減っています。求人広告の文面を工夫するだけでは、どうにもならない数字です。
採れない理由は、大きく3つ
1. そもそも、目指す若者が減っている
少子化に加えて、仕事の選択肢が増え、整備士を目指す若者が減っています。国土交通省の資料でも、少子化や職業選択の多様化が理由として挙げられています。
2. 大手や異業種に流れていく
数少ない整備学校の卒業生は、給料や休みの条件がよい大手ディーラーなどに集まりやすくなります。地域の整備工場は、最初から不利な戦いを強いられています。
3. 「きつい・休めない・上がらない」のイメージ
夏は暑く、冬は寒い。繁忙期は残業が続く。給料が上がっていく道が見えにくい。実態はともかく、こうしたイメージが若者や親御さんに持たれていることも、正直に認めたほうがいい現実です。
整備工場が打てる5つの手
手1:給与と働き方を見直す
国土交通省は「自動車整備士等の働きやすい・働きがいのある職場づくりに向けたガイドライン」を出しています。その中では、労務費の適正な価格転嫁などによる賃金の確保、整備士資格手当や役職手当、勤務シフトの柔軟化、若手が先輩に相談できるメンター制などが挙げられています。
- よい点:日本人にも外国人にも、今いる職人さんにも効く。いちばんの土台です。
- 難しい点:お金がかかる。工賃の見直しなど、お客さんへの説明も必要になります。
手2:未経験の若手を採って、育てる
整備学校卒にこだわらず、車が好きな未経験の人を採って、働きながら資格を取ってもらう方法です。
- よい点:応募の母数が増える。工場のやり方に染まりやすい。
- 難しい点:一人前になるまで時間がかかる。教える人の手が取られる。資格を取った途端に大手へ移る心配もあります。
手3:シニアの力を借りる
定年を迎えたベテランに残ってもらう、ほかの工場やディーラーを退職した人に来てもらう方法です。法律でも、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になっています。
- よい点:すぐ戦力になる。若手や外国人スタッフの「教える役」にもなれる。
- 難しい点:体力面で任せられる作業に限りがある。長くは続かない。根本的な解決にはなりにくい。
手4:女性が働ける職場にする
国のガイドラインでも、女性用の設備や機器、産後の復職の仕組みづくりが取り組み例として挙げられています。受付やフロント業務から始めて、整備の資格を目指してもらう道もあります。
- よい点:これまで来なかった層から応募が来る。職場の雰囲気がよくなることも多い。
- 難しい点:更衣室やトイレなど、設備の見直しが必要なことがある。
手5:外国人材を受け入れる
技能実習(2027年4月からは育成就労)で育てる方法と、特定技能で一定の技能がある人に来てもらう方法があります。
- よい点:若くて意欲のある人に、制度の上でも長く働いてもらえる前提で来てもらえる。
- 難しい点:来てもらうまで半年〜1年かかる。給料は日本人と同等以上で、組合などへの費用もかかる。言葉や生活の支援、そして最初に教える手間が必要です。
外国人材は「安く雇える手」ではありません。日本人の応募が来ない中で、人手を育てて確保する手です。詳しくは制度の違い、費用のリアル、特定技能の条件の記事にまとめています。
どの手を選んでも、共通すること
5つの手を並べてみると、実は全部に共通する土台があることに気づきます。
- 教える人と、教える時間:未経験の若手も、外国人スタッフも、最初に誰かが隣で教えなければ育ちません。
- 給料の上がり方が見えること:資格を取ったら、任される範囲が広がったら、いくら上がるのか。
- 相談できる人がいること:辞める理由の多くは、仕事そのものより人間関係です。
手1の「働き方の見直し」は、どの手を選ぶにしても先にやっておく価値があります。そのうえで、即戦力が欲しいならシニアや特定技能、時間をかけて柱を育てたいなら未経験採用や技能実習・育成就労、というふうに組み合わせて考えるのがおすすめです。
最後に、正直な話
このラボは外国人材の勉強部屋ですが、「外国人材さえ入れれば解決する」とは思っていません。日本人が辞めていく職場には、外国人スタッフも残りません。逆に、外国人スタッフが育つ職場は、日本人の若手も育つ職場です。
そして、どの手でもいちばんの壁になるのが「忙しくて、教えてる暇がない」という現実です。このラボでは、外国人スタッフを迎える最初の1週間ほど、元店長の運営者が現場に入って隣で教える現場サポート(別料金のオプション)も用意しています。まずは、どの手がうちに合うのか、情報を集めるところから始めてみてください。
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